保険で対応できる、クラスプ義歯を使うとなぜ歯が抜けてしまうのでしょうか?
クラスプとは、部分入れ歯を支えるために、歯に引っ掛けて固定する金具のことを言います。
保険治療が効くために、多くの方が使用されていると思います。
しかし残念ながら、患者さまの中には、入れ歯が合わない、痛い。ということで、何度も調整に歯科医院へ来院し、半年毎に作り直しをするので、いつまでたっても治療が終わらないという方もいらっしゃいます。
なぜならば、入れ歯を支える歯は、作り直しをするごとに、歯は良くなっていくことはなく、クラスプで引っ掛けた歯は次第に緩んでしまい、抜けてしまいます。
それでは、クラスプ義歯を使うとなぜ歯が抜けてしまうのでしょうか?
それは、クラスプは歯の軸の方向に力がかからないからです。
クラスプは歯をくいを抜くような動き(前後にゆする)をさせてしまいます。
クラスプを歯に引っ掛けると、密着はしていますが、接着していないためグラグラと動きます。
入れ歯が動く→クラスプを引っ掛けている歯が揺すられる→将来的に歯を失ってしまう。
という経過をたどります。
そして、最近流行っている、クラスプがみえないような入れ歯、やわらかい入れ歯は一見、よく見えますが、部分入れ歯に必要なレストがありません。
レストという言葉を初めて聞く方がほとんどだと思いますので、ご説明させていただきたいと思います。
部分入れ歯に大切なのは、歯に引っ掛けるクラスプより、実はレストなのです。
レストは、入れ歯の沈み込みを防止する役割と、歯の軸方向に力を分散させる効果があります。
もし、レストがなかったら、入れ歯はフカフカと上下に揺れてしまい、奥歯で噛み締めることができません。また、そのような上下に揺れす入れ歯を使うと、骨にも負担がかかり、徐々に骨が減ってしまう原因ともなるでしょう。
私たちが、クラスプの見えない入れ歯、やわらかい入れ歯をおすすめしないのはこのような理由によります。
シリコンのクラスプは、基本的には保険のクラスプと構造は変わらないため、歯を揺すってしまいます。
数年ごとに作り直しをするたびに、患者さまの歯を失うばかりか、先生への信頼も失いかねません。
インプラントがあるから、部分入れ歯は無くなっていくのではと感じますが、そのようなことはありません。
今回の患者さまは90代男性。
インプラントをするにも、テレスコープ義歯にするにも体に負担がかかり、リスクを伴いました。
できるだけ最小限の負担で、今ある歯を利用した、パーシャルデンチャー(部分入れ歯)で治療をさせていただきました。
レストをしっかりとつけて、クラスプを使わずにI bar という装置を利用することにより、歯に負担がかからないようにしました。
私たちは、患者さまの歯の状態や健康状態に合わせて、治療方針を考えます。
いくつかの方法をご提案、またはご希望をお聞きし、患者さまに合った方法をお伝えしたいと思います。
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